藻塩ふる佐渡の新米試食会    高井 百子

藻塩ふる佐渡の新米試食会    高井 百子

『この一句』

 藻塩。馴染みはないが、何やら旨そうな塩の名だ。調べると、「海藻を重ね潮水をかけ、焼いて水に溶かし上澄みを煮詰め」うんぬん、とある。万葉集にも歌われた古来の塩だそうだ。詳しくは知らなくても、「藻」という字が旨み成分を醸し出し、口中の唾液が増す。これだけで句の掴みは十分なのに、「佐渡」だ。芭蕉の名句、世阿弥の流刑地、朱鷺のふるさと、などなど連想されるあれこれがたちどころに浮かぶ。その佐渡の、しかも新米ときて、とどめが試食会である。これだけ道具立てが揃ったら、もはやこの句の虜。採らないわけにはいかない。句会では同類が何人もいて高点を得た。きっとパブロフの犬よろしく、ごくりと唾を飲み込みながら票を投じたのだろう。
 いくつも惹かれる要素はあるのだが、何といっても本命は「試食会」だろう。これは実体験がないと出てこない言葉だ。この三文字で句全体のリアリティが保証された。佐渡に旅行した作者の土産話、「宿でね、新米の試食会があってね、それに藻塩というまろやかなお塩をふったご飯の美味しかったこと!」が聞こえてきそうな一句である。
(双 19.10.17.)

この記事へのコメント