富富富てふ名前にひかれ今年米  谷川 水馬

富富富(ふふふ)てふ名前にひかれ今年米   谷川 水馬

『この一句』

 なぞなぞみたいで愉快な句である。本当かなと思って調べてみると、一年前にデビューした富山県産の新しい米の銘柄という。「富富富」は、富山の水、富山の大地、富山の人が育てた米であることを表し、ごはんを食べた人に「ふふふ」と微笑んで、しあわせな気持ちになってもらいたいと県はPRしている。
 米の銘柄はコシヒカリの人気が高いが、近年は各県が独自銘柄を開発し、食味とネーミングを競っている。ブランド米になったあきたこまち(秋田)のほか、晴天の霹靂(青森)、恋の予感(広島)、天使の詩(佐賀)といった名前もある。その中でも「富富富」は出色だ。この珍名を見つけ、新米の兼題句に仕立てようと思った時点で成功している。
 珍しい見聞や体験を短文にして、他人に伝えようとする行為は、ジャーナリズムに通じる。江戸時代の俳諧の隆盛は、そうした側面もあったのではないだろうか。
 ところで「てふ」の用字は古くて、現代的な内容にそぐわない感じがする。「との」とか、「とは」で良かったのではないか。
(迷 19.10.14.)

この記事へのコメント

  • 酒呑洞

    (迷)氏の言われるように、私も「富富富とは」とした方がいいなと思います。「てふ」というのは「と言ふ」をつづめた言葉で、大昔の和歌に用いられた言葉です。こういうカビの生えた言葉遣いを珍奇なネーミングの「今どきの句」に用いるのは、ポリ袋を大和糊で貼り付けるようなものです。
    2019年10月14日 17:57