献立は決めず枝豆まず籠へ    星川 水兎

献立は決めず枝豆まず籠へ    星川 水兎

『この一句』

 主婦にとって毎日の食事作りは大仕事であり、重荷と感じている人が多いようだ。献立を考えるだけで疲れてしまうらしい。特に亭主が退職して濡れ落葉と化してべったり家に居るようになると、益々大変だ。現役時代は朝食を掻っ込むや否やそそくさと家を飛び出し、夜も食べるかどうか分からない。「棚に目刺がござりやす」じゃないが、何か適当に拵えて置けばいい。ところが亭主が一日中在宅となるとそうはいかない。我が家の山の神は「人間どうして毎日三度々々食事しなけりゃいけないのかしら」とぶつくさ言っている。
 しかし、この作者は大らかに呑気に構えている。スーパーの中をぶらついてる内に何か考えつくでしょうと、取り敢えずは枝豆の袋を買物籠に放り込んだというのである。
 この呼吸が実にいい。このようにとんとんと運ぶのが、俳諧味をもたらす所以である。しかし、とんとんと進み過ぎて、献立の方は結局「今夜は出来合いのお惣菜と枝豆にしちゃいましょ」ということになりはせぬか。それがちょっと気に掛かる。
(水 19.10.03.)

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