朝顔の蔓しなやかに天を向き   政本 理恵

朝顔の蔓しなやかに天を向き   政本 理恵

『季のことば』

 朝顔が支柱に沿って、上へ上へと蔓を伸ばしている様子を詠んだ素直な写生句である。
 朝顔は奈良時代に遣唐使がその実を薬として持ち帰ったとされ、古くから日本人に愛されてきた。江戸時代には武士や町人に栽培ブームが起き、品種改良によって花の大きさや形の変化を競った。
 開花期は7月から11月だが、最盛期は新暦8月で秋の季語となる。旧字の蕣や漢名の牽牛花でも詠まれる。青や紫、赤色の花を明け方に咲かせ、昼には凋む。
 掲句は朝顔の蔓に目を向け、その成長ぶりを「しなやかに天を向き」と表現する。緑の若い蔓が身を柔らかく曲げ、空へ伸びて行く様子が目に浮かぶ。朝顔は日照時間が短くなると開花する短日花で、蔓は支えがあれば、上方へどんどん伸びる。成長期には一晩で10センチ以上伸びる時もあるという。「朝顔に釣瓶とられてもらひ水」という加賀千代女の有名な句も、現実の写生句かも知れない。
 日経俳句会に今春加入した作者は、句歴は浅いながら女性らしいきめ細かい観察眼と「しなやかな」感性があり、今後が期待される。
(迷 19.09.17.)

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