聴診器秋風の中振りまわし    鈴木 好夫

聴診器秋風の中振りまわし     鈴木 好夫

『この一句』

 推察の通りお医者さんの手になる句である。合評会でちょっとした議論を巻き起こした句でもある。曰く、秋風が吹き始めてきて、お医者が聴診器を振り回すとはどういうことか。まず患者に危ないではないか。そもそもシンボルとも言える聴診器を振り回すことなどあるのか、などなど。作者答えて、患者に当てる部分を軽く回しただけと。なるほど、それくらいならあり得るなと一同得心したしだい。それでは、暇を持て余すあまりそうしたのか、それとも忙し過ぎて聴診器がフル稼働の盛夏の状態を戯画化したのか。筆者もそこを推し量ったところである。
酷暑のこの夏、患者は冷房の効いている我が家から離れられず、したがってお医者は暇を持て余す。逆に熱中症流行りで急患続出、目の回るほどの忙しさ、その夏が過ぎ去ってやれやれと・・・。どちらとしても、お医者が聴診器を振り回す場面なんて、実に俳諧味溢れユニークな句になったものだ。句会に様々な職業の人々が集まって来ることによって、おのずと知らない世界の雰囲気に浸れるもののようだ。(葉 19.09.13.)

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