高原のレタス縫い行く小海線 中沢 豆乳
高原のレタス縫い行く小海線 中沢 豆乳
『季のことば』
高温で野菜不作だった昨夏が尾を引いて、スーパーや青果店で高値が続いている。キャベツ一玉4、5百円というのを聞くと、おちおちトンカツも食べていられない。2、3月も寒波のせいで高値が治まらず、4月に入っても過去の価格水準に落着く気配はない。春の露地物が出回るようになっても高値止まりだ。
最近ではレタスも工場内で水耕栽培しているようだが、それで全国の品不足を賄いきれるとは思えない。レタスは今でこそ年中食べられる葉物野菜。さっと洗うだけで肉料理の付け合わせにぴったり。レタスしゃぶしゃぶというのもあって、ちょっと驚いた。卵サンドに挟めば、あのシャキシャキという音と相まって食感が捨てがたい。
「レタス」はそもそも爽涼感のある季語だ。「萵苣(ちしゃ)」と難しい古名で言うよりぐんと身近に思える。したがって句にもおのずと親近感と爽やかさが生まれる。主な産地は群馬県の嬬恋、長野県の野辺山周辺で高原野菜の代表格。
筆者は会社勤めのころ、仲間たちと泊りがけの夏ゴルフで長野県川上村を訪れたことがある。真夏とはいえ早朝や夜は冷涼で、なるほど高原野菜の産地だと思った。畑中を縫うように走る列車は、窓外に一面のレタスの薄緑を見るわけで、この句のとおりである。レタスは夏の季語にふさわしいと思えるほどだが、「ちしゃ」と呼ばれた江戸時代の伝統で春の季語になっている。
それはともかく、この句は「高原」「レタス」「小海線」の三題が噛み合っていて、とても…