故郷の磯の香りや桜鯛 廣田 可升
故郷の磯の香りや桜鯛 廣田 可升
『合評会から』(酔吟会)
道子 すーっと気持の中に入って来る句で、桜鯛の姿が目に浮かびます。
光迷 席題の「故郷」の句の中で、最も春を感じさせる句だと思いました。磯の香りを感じた鼻に桜鯛の色を誉める目、鯛を料理して楽しむ舌という感覚が動員されているのもいいですね。
水牛 これはいい句ですねえ。「故郷」という席題に呼応し、出て来たのが昔懐かしい故郷の「桜鯛」。ぴたりはまっています。ただ細かいことですが、「磯の香り」といえば真っ先に浮かぶのは海藻類、貝類でしょう。桜鯛ともなれば「海の香り」か「浜の香り」とした方が良かったのではとも思いました・・・。
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俳句には詠むもの(季語やモノ・コトなど)が決められている「題詠」と自由に好みのものを詠む「雑詠」がある。題詠には予め示される「兼題」と句会の場で示される「席題」がある。席題句を詠む持時間は概ね十五分程度で、いわば即興である。それだけにその句の良し悪しは、過去の経験などを思い返し手際よくまとめる発想の柔軟さがカギになる。
席題をもっと広げて、句会参加者ひとりひとりが封筒に題を書き、全員がその題について詠んだ短冊を封筒に入れる袋回しという遊び方もある。これは絶好の頭の体操になる。試されてはいかがだろうか。
(光 25.04.05.)