三月や生の息吹きと鎮魂と 和泉田 守
三月や生の息吹きと鎮魂と 和泉田 守
『合評会から』(日経俳句会)
双歩 三月は、何かと鎮魂の季節ですが、芽吹きの季節でもあります。
鷹洋 三月は寒さもやわらいで雪解けとなります。生命の息吹きを感じる中で、東日本大震災のあった鎮魂の11日を迎え、人の世の不条理を感じました。
千虎 三月は生命が芽吹く季節ですが、空襲や地震など多くの命が失われた鎮魂の月でもあります。そうだなと思わせる一句。
枕流 東京大空襲に加えて東日本大震災。生の息吹が感じられる三月は鎮魂の月でもあります。
明生 東日本大震災のことだと分ります。あの時に生まれた命もあれば、亡くなった人も多い。「三月や」が効いています。
静舟 大空襲は人類の恥ずべき虐殺行為だ。季節は巡るが死者への弔いは忘れまい。
* * *
選者が口々に述べるように、3月は鎮魂の月。80年前の東京大空襲で10万人以上の犠牲者が出たのは、10日。死者・行方不明者が2万2千人を超えた東日本大震災は、14年前の11日。早くも30年が過ぎた地下鉄サリン事件は、20日だった。
鎮魂の月としては、炎暑の8月が思い起こされる。それに対し春3月は、千虎さんが言うように、生命が芽吹く季節でもある。この句は、命の誕生を讃える気持と、死者の魂を鎮める心とを鮮やかに対比させ、命の重みを改めて考えさせてくれる。
(双 25.04.01.)