配達のピザここだ此処花筵 玉田 春陽子
配達のピザここだ此処花筵 玉田 春陽子
『合評会から』(番町喜楽会)
青水 これは、ウーバーの配達でしょう。「花筵」は、上野公園かな。気の利いた時事句だと思います。
迷哲 現代の花見風景ですね。「ここだ、ここだ」と立ち上がって合図する景が、生き生きと描かれています。
木葉 ウーバーなどの配達はどこへでも行く。花見の場所にもピザ到着。「ここだ、ここだよ」と呼ばう姿が見える、今日的な句。
可升 やりすぎでしょう(笑)。最後まで採るか採らないか迷いました。「ここだ此処」という措辞がいかにも読み手の笑いを誘おうとしている感じがします。
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芭蕉の「木のもとに汁も鱠も桜かな」という名句は、「かるみ」という言葉を最初に付した句として知られている。汁や膾という卑近な食べ物を題材にして、俗を雅に謳いあげたという。
芭蕉と比べられても作者は戸惑うだろうが、掲句はどうだろう。今日の花見の一断面を、まるでその場に居るかのような臨場感あふれる描写で詠んだ。ピザのデリバリーは、客の携帯番号さえ把握できれば、花見の席など屋外でも配達してくれる。「ピザの配達」という現代の俗を巧みに取り入れ、作者らしい目の付け所が光る一句。
(双 25.04.30.)