東京駅二十三番線の春      星川 水兎

東京駅二十三番線の春      星川 水兎 『この一句』  一読していろんな感想や疑問が持ち上がった。「これが俳句だろうか?」「俳句だとすれば、今まで読んだことのない新鮮さがある」「ところで二十三番線って何だろう?」「松本清張の『点と線』と何か関係ある?」調べてみるとあれは十三番線ホームの話だった。  二十三番線は東北、北陸、上越新幹線などの発着ホーム。なるほど北国から来た乗客の装いにもやっと春が感じられるようになったという、北国の春を詠んだ句かと一人合点した。  句会に欠席された作者に問い合わせると、東京駅のホームが二十三番まであること知り、世界一多いのじゃないかと思ったのがきっかけとのこと。「春」は旅行シーズンに加え、入学や転勤など移動の多い時期でもあり、「春」と駅のホームの取合わせは良さそうだと思い詠んだとのこと。俳句版「北国の春」ではなかったが、当たらずとも遠からずである。この句に一票を投じる方はそんなに多くはないだろうと思っていたら、なんと四票も集めて高得点句になった。同好の士がけっこういたわけである。  ちなみに、東京駅には二十三番線まであるが、十一番から十三番は今は欠番になっていて、『点と線』の舞台は消えてしまったようだ。「昭和も遠くなりにけり」である。  もう一つ、その後の調べでは、世界一のホーム数はフランクフルト駅だったらしい。作者の「残念!」の声が聞こえる。 (可 25.02.07.)

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