縦列のサギ動かざる寒の川    杉山 三薬

縦列のサギ動かざる寒の川    杉山 三薬 『合評会から』(日経俳句会) 反平 以前住んでいた家が大きな用水路に近く、これと同じような風景をしばしば見かけた。岸辺に寄り添ってじっとしている。動かない姿がまさに冬景色なのだ。 操 身じろぎもしない鷺の姿。瞑想する僧侶の姿に重なる。 鷹洋 これでもかという寒さを凍てつくサギに仮託したうまい俳句です。縦列の措辞が利いている。           *       *       *  作者は自宅近くを流れる多摩川上流の川辺をほぼ毎日、自転車で走っているという。鷺が何十羽と足を半分くらい水につけて、ほぼ真っ直ぐに縦隊を組んでいる。これが冬の情景。  「あんなに動かないのに、よく魚が獲れるものですね」「鷺が動かないから、魚が動く。その瞬間に首を下げて、魚が獲れるのでしょう」といった会話が合評会で交わされた。鷺の生態論議でしばし賑やかになった。  こうした風景は昭和四十年代までは東京二十三区の川や沼にごく普通に見られたものだが、今ではその昔「都下」と言われた所まで行かなければ見られない。それも年を追うごとに消えてゆく。 (水 25.02.01.)

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