初手水昭和百年幕が開く 中野 枕流
初手水昭和百年幕が開く 中野 枕流
『合評会から』(日経俳句会)
三薬 気がつかなかったけど昭和百年なんだよね。ぼくらの頃は明治百年なんてよく言ってました。気付かなかったことを気付かせてくれたということで。こういう記憶が好きなんで、もう自動的に採りました。
青水 気の利いた時事句ですね。中七の捌きも季語の斡旋も見事です。取り立てて感慨を覚えませんが、巧みな作者に一票。
朗 昭和は遠くなりにけりです。生きていれば父は九十二歳、母は九十一歳。自分もぼおっとしているうちに、はや六十九歳になりました。
木葉 昭和百年の年を詠む句。ただ、大きなテーマを詠むのに「初手水」は景が小さすぎる。初詣や初参と大きく構えては。
定利 上五が良いですね。昭和生まれは頑張らねば。
双歩 青水さんは取り立てて感慨を覚えないと言いましたが、幕が開くという言い回しが良いと思いました。
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大正15年12月25日に大正天皇が崩御、即日、昭和元年になったので、正確に言うと「昭和百年」は今年十二月二十五日。その上、今年は戦後八十年、三島由紀夫生誕百年等々いろいろある。年末にかけて様々な行事が繰り広げられそうだ。初詣でそれに気がつき句に仕立てたのが何と言ってもお手柄。ただ、上五は木葉さんの言う通り、「初詣」と素直にやった方が良かったと私も思った。
(水 25.01.29.)