大銀杏結ひて初場所大の里    徳永 木葉

大銀杏結ひて初場所大の里    徳永 木葉 『この一句』  昨年の初場所で新入幕した大の里の活躍は目覚ましいものがあった。夏場所で史上最速の7場所で初優勝を遂げ、秋場所で2回目の優勝、これまた最速の9場所で大関に昇進した。あまりに早い昇進に大銀杏が結えるほど髪が生え揃わず、小さな髷で白星を重ね、土俵を沸かせた。  掲句は1月酔吟会の席題「結」に応じて即妙に詠まれた一句。大関となった大の里がやっと大銀杏を結えるようになり、初場所の土俵に上がるというエピソードに、席題の「結」を巧みに織り込んでいる。席題を見て20分足らずで詠んだ句とは思えない完成度である。  句会では、同じテーマと席題を詠み込んだ「髷結へぬ力士あばれし去年の場所 千虎」の句があり、こちらを選んだ人もいた。この句は昨年の大活躍に目が向けられ、小さな髷の大の里が彷彿とする。新年の初句会だったので掲句を選んだが、去年の大の里と今年の大の里が句会に〝出揃う〟偶然に驚いた。  1年半ほど前に酔吟会で採用された席題方式はすっかり定着し、句友も慣れて来たようだ。わずかな時間にレベルの高い二句が並んだことがそれを如実に示している。大相撲の初場所は12日から始まった。晴れて大銀杏を結った大の里、初日は気負い込んで出たところを曲者翔猿の引き落としにつんのめり、黒星発信となってしまったが、これからどのような相撲を取っていくか注目される。  さらに次の酔吟会では席題でどんな傑作が生まれるかも楽しみである。 (迷 25.01.13.)

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