湯気立てるラガーの声の殺気かな 金田青水
湯気立てるラガーの声の殺気かな 金田青水
『この一句』
この句を読んで、最近テレビで放映された1987年の「雪の早明戦」が思い浮かんだ。国立競技場は、雪だるまが作れるほど大量の積雪で、雪かきをしたとはいえグランドは泥んこ、ジャージも泥んこ。激戦の末、10対7の僅差で早稲田が勝った。
あの頃、ラグビー好きの友人に誘われて、よく国立競技場や秩父宮ラグビー場に行った。当時は、日本選手権は大学生対社会人の戦いで、平尾を擁する同志社と松尾を擁する新日鐵釜石の試合など、いまでも思い出に残る試合がある。正月に帰省した時には、花園の社会人選手権を観に行った。この競技場はスタンドとグランドが近く、試合中の選手や審判の声がよく聞こえた。正月の試合なのに客席はがらがらで、スタンドのおっさんたちの弥次もよく響いた。弁当箱に詰めたおせちを肴に、魔法瓶の熱燗で一杯やりながら観戦した。
筆者は最初、この句を「ラガーの声」が「湯気を立てる」と読んで、とても面白い表現だと思った。よくよく考えれば、「湯気立てるラガー」の「声」と読むのがまっとうだと思うが、それだと少し面白みに欠ける気がする。「殺気」は少し大袈裟かなと思ったが、あの「雪の早明戦」のような試合であれば、あながち大袈裟でもない。いまでも、あんな過酷なコンディションでもラグビーはやるのだろうか。ラグビー観戦とは、すっかり疎遠になってしまった。
(可 25.01.05.)