良きことを心に刻む年忘 中野 枕流
良きことを心に刻む年忘 中野 枕流
『合評会から』(日経俳句会)
てる夫 世界を見渡しても悪いことばかりが続いている年ですから、良きことを心に刻む年忘れという、この句がことさらに良い句であると思いました。
水牛 どうもいいことが無い。歳を取ると感激も薄れるから、良いことがあっても、あまり感じ取れなくなるのかもしれない。ニュースでは嫌なことばかり次々に起こる。
双歩 ある歌の歌詞に「いいことばかり手紙に書いて云々」とあったのを思い出しました。敢えて良いことを探し出して、心に刻むという姿勢に共感しました。
鷹洋 ロシアのウクライナ侵略、中東の底なしの殺戮、トランプの再登場。聞きたくない見たくない世相だが、核禁のノーベル平和賞、大谷翔平の大記録など素晴らしいこともあまたあり、前向きの評価で二〇二五年を迎えたい。
枕流(作者) 一年間の締めくくりに良かったことを心に刻むことで、良い年だった思えるのではないか、と詠みました。
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誰もが納得する句だ。素晴らしい年だったとは、お世辞にも言えない令和6年を振り返り、せめて前向きにと作った句と思える。元日の能登半島地震、翌日には日航機の羽田炎上事故と続き、いったいこの年はどうなるのだろうと危惧せざるを得なかった。けれどもくよくよしたってしかたがない。大晦日。ここは、「いいこともあったじゃないか」と思い起こさせる作者の心配りを感じつつ、年越蕎麦を啜ろう。
(葉 24.12.30.)…