秋深し他人の空似とすれ違ひ   植村 方円

秋深し他人の空似とすれ違ひ   植村 方円 『合評会から』(日経俳句会) 朗 秋は人恋しくなる季節。すれ違った人に懐かしい人の面影が重なったのでしょう。 阿猿 しばらく会っていないけど気になっている人、もう会えない人の面影。「あ、違った」というときのちょっと寂しい感じが秋ですね。 ヲブラダ 不思議感が、珍しい季語の側面ですね。 枕流 秋が深まるとすれ違う人も隣に住む人も気になります。           *       *       *  晩秋の爽やかな散歩日和だったのだろう。気分がいいから、思わず歩みが捗る。さっさと歩いていて、しばらく会わなかった人にすれ違った。声を掛けようかと思う間も無くすれ違ってしまったのだが、振り返ってみると、やはり人違いのようだった。そんな一瞬のところを詠んでいて、上手いものだと感心した。  令和6年の今年は夏が異常に長くて、秋をしみじみ味わう暇も無く冬になってしまった。と、思ったら11月に入ってから秋の日が訪れた。なんだか化かされたような気もするが、晩秋の気分を味わい直している。  我が家の近所にドブ川を暗渠にして「せせらぎ緑道」と名付けた2kmばかりの散歩道がある。することの無い老人たちの憩いの場になっており、この句のような情景が連日出現している。 (水 24.11.17.)

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