デジタルの世や虚も実も文化の日 前島 幻水
デジタルの世や虚も実も文化の日 前島 幻水
『この一句』
インターネットの世界が広がって、フェイクニュースが飛び交い、詐欺メールが横行するようになった。そんな世の中に疑問を投じる一句である。
インターネット以前にも、虚言や流言はいくらもあり人から人へ伝わった。しかしながら、ネット社会では、誰もが気軽に発信できることから圧倒的な量になり、またネット特有のスピードであっという間に拡散するのが、かつてと大きく異なるところだろう。
「虚」と「実」の仕分けはそう簡単ではないと常々思っている。たとえば、日本が戦争をしていた頃に「実」だと信じられたことの多くが、敗戦後「虚」に転じていること。たとえば、殺人事件の裁判で「実」として提示された証拠物件が、長い年月の後に「虚」と判明すること。神のみぞ知る真実は揺るがないとしても、人の価値判断を伴う「虚実」は容易に変転すると言わざるをえない。
あたかもアメリカは大統領選挙の年。目の前のテレビは、トランプ氏の大統領への返り咲きを伝えている。彼はフェイクニュースの権化のような人物であるが、その彼に大多数の米国民が為政者としての優位性を認め、将来を託す一票を投じたことはまぎれもない「実」である。その事実から目を離してはいけないだろうと思う。
もともと「虚」も「実」も単なる情報である。飛び交う情報の中で、何がほんとうに「虚」であり「実」であるか、結局のところ、一人一人が自分自身で考え判断するしかない。「文化の日」から数日たったが、この句のおかげでそ…