身に入むや組立トイレ講習会   大澤 水牛

身に入むや組立トイレ講習会   大澤 水牛 『合評会から』(酔吟会) 三薬 災害大国に生きる老人としては、これは他人事ではない。古めかしい季語に、現代風物をうまく組み合わせました。 春陽子 きっと作者自身が講習会に参加されたのでしょう。そう思うと、この句がぐっと臨場感を増し、身に入むが伝わって来ます。 光迷 地元の町内会では非常事態に備える策として組立てトイレや食料、水などを保管しています。災害続きで備えは怠れませんね。 木葉 南海トラフ地震などが注目される今、時宜を得た句。「組立トイレ」には特に老人の切実さを連想させます。 青水 この逸話が持つ切実さと可笑しみ。それが過不足なく納まり、会場のざわめきや作者の心情までもが浮き上がってきました。           *       *       *  水牛歳時記には、『秋風がひんやりして来ると、人は誰しももののあはれを感じるようになる。こうした秋のもの思いを誘うような、肌に沁み通って来るような感じを言うのが「身に入む」という季語』とある。掲句は、その「身に入む」という雅な季語に、「トイレ」という俗ではあるが切実なモノを取り合わせ、読者をはっとさせる。特に高齢者にとっては「組立トイレ」の使い方などの情報は極めて現実的な話題だ。  仏教の教えに「いま、ここ、われ」という言葉がある。俳句でも同様に「いま、ここ、われ」が重要と説く俳人がいる。この句は「組立トイレ講習会」を受講した作者の「いま、ここ、われ」を詠み込んだ、優れた現代俳…

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