庭の鉢居間にあふれる厄日かな 中村 迷哲
庭の鉢居間にあふれる厄日かな 中村 迷哲
『合評会から』(番町喜楽会)
的中 いまちょうど台風シーズンですが、台風が来る前に庭の鉢を居間に移すというのは、とてもリアリティがあって、なおかつ微笑ましい光景です。
白山 台風が来るのに備えて鉢を避難させる。狭い部屋がなおさら狭くなりますが、しようがないですね。
二堂 台風シーズン、鉢を家の中に避難させることも多くなります。
てる夫 荒天対策で貴重な鉢物を屋内に取り込んだ。その数、半端じゃあない。天気回復までの辛抱とはいえ、なんともご苦労様です。
幻水 我が家もベランダですが、妻が同じことをしています。
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作者によると、御父上が菊作りが趣味で「台風来襲となると家族総出で鉢を家の中へ入れさせられ、居間にまであふれてしまいました」ということだった。菊作りは春の「根分」に始まり、大輪菊の場合は初夏仲夏の挿し芽、大鉢への植え替え、脇芽摘み、支柱立て等々、一年中手間がかかる。台風シーズンは蕾が着く頃合いで極めて大事な時期でもある。天気予報を聞きながら、いよいよとなれば屋内に取り込む。奥さんはじめ子供達まで総動員だ。
私は小菊しか作っていないから屋内にまで入れずに済んでいるが、それでも植木棚の鉢を下に下ろし囲いをする。それを詠んだ『植木鉢せっせと下ろす厄日前』を同じ句会に出したのだが、「居間にあふれる」の迫力には到底敵せず、無残な返り討ち。
(水 24.09.24.)