曼珠沙華ここにカルメン立たせたし 堤てる夫
曼珠沙華ここにカルメン立たせたし 堤てる夫
『合評会から』(番町喜楽会)
光迷 曼殊沙華の赤にカルメンの赤。カルメンは曼殊沙華を口にくわえるのだろうか。そういう光景を想像する楽しさのある句です。
水兎 分かります!埼玉の巾着田に何年か前に行ったのですが、コスプレイヤーで溢れていました。絶景の一つですね。
青水 堤さんがこんな句を詠むんだ!
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彼岸花という秋彼岸の季節にふさわしい名前のほか、曼殊沙華には死人花、幽霊花などの怖ろしい別名がある。季語には採り入られていないようだが、地獄花と極め付きの異称がありなんとも言い難い秋の花だ。鱗茎が有毒ゆえに悪名が付いたともみられるが、でんぷん質を多く含み晒して食せば飢饉時には役立つという。
炎のような紅蓮の花は美しい。今風に言えばネットに「映える」花である。作者は目の前の曼殊沙華の群生に、そこにカルメンを立たせたら絵になるだろうと思ったのだろう。カルメンが唇にくわえフラメンコを踊れば、ドン・ホセならずとも男を狂わせるにちがいない。曼殊沙華に対する長老たる作者のイメージがこの句を作らせ、句友に意外な思いを抱かせた。この世のものとも思えない、真っ赤な曼殊沙華は一筋縄にはいかない花だ。
(葉 24.09.20.)