夕立はゲリラ豪雨と名前変え 工藤 静舟
夕立はゲリラ豪雨と名前変え 工藤 静舟
『季のことば』
「夕立」と来れば、炎暑の一天にわかにかき曇り、ざっと降り出す広重の名画のような情景を思い浮かべる。さっと上がった後は埃っぽさがきれいさっぱり洗い流され、涼しくなり、皆生き返った気分になる。これぞ夏の景物というわけで季語になる。
しかし「ゲリラ豪雨」では風情も情緒も無い。どこそこのガード下道路が冠水、自動車が沈んで運転していた人が溺死、あるいは「田圃の様子を見に行ったウチの人が帰って来ない」などと大騒ぎになったりする。
ゲリラ豪雨も入道雲(積乱雲)が降らせる点では夕立と同じだが、局地的にいきなり発生するところがいかにも不意打ちの感じなので「ゲリラ」と呼ばれるようになった。2000年代に入ってから目立つようになった気象異変で、ことにこの数年頻繁に発生するようになった。わずか数キロ四方の小範囲の集中降雨で、短時間に大量の雨を降らせる。ヒートアイランド現象とか、地球温暖化に伴うあれこれの気象異変のもたらすもので、現在の気象予報技術ではとても予測できない、まさにゲリラそのものの驟雨である。
この句は伝統的な俳句の詠み方からすれば一寸異色で、川柳めいてもいるが、そこが「ゲリラ豪雨」という句材と合わさって今日的な感じを醸し出している。
(水 24.08.23.)