添書きの文字の細さよ夏見舞 加藤 明生
添書きの文字の細さよ夏見舞 加藤 明生
『合評会から』(日経俳句会)
双歩 添書きの文字が細い。何で細いのか、いろいろと想像されて、なんか物語がありそうだなと。
朗 夏場で疲れちゃったのかなあとか、歳とってあれなのかなあなど、いろいろ想像できそう。
水牛 添書きの文字の細さが、なんとなく夏で参っちゃいましたよ、というところを分からせる。そんな句になっていて、暑中見舞の葉書らしい。
百子 何と書いてあったのでしょうか。ご自分の体調でしょうか。相手を気遣う添書きでしょうか。何だか心配になりますね。
水馬 これだけ暑いと身も文字も細ります。
* * *
昨今、暑中見舞の葉書をやり取りしている人はどのくらいいるのか不明だが、多くはないと思われる。筆者も「書くことも来ることもなし暑中見舞い(阿猿)」状態だ。「偶に来る暑中見舞は業者から」と詠んでみたものの、川柳のようで出句しなかった。兼題の「暑中見舞」に、過去の記憶を辿ったり、あれこれ想像したりとみなさん苦労したようだ。
そんな中、「添書き」を詠んだ句が目立った。掲句もその一つ。内容よりも「文字が細い」ことが気になる暑中見舞だという。以前は、もっとしっかりしていたのか、細いだけではなく弱々しい筆致だったのか。高齢者の多い句会だけに、身につまされたようで、共感者が多かった。
(双 24.08.07.)