ブレイキンなにそれ五輪夏のパリ 岩田 千虎

ブレイキンなにそれ五輪夏のパリ 岩田 千虎 『この一句』(酔吟会)  この日の席題は「五輪」。作者はその席題の出題者であり、「五輪待つ星に戦のやまぬ夏」という句も含め、この日の句会で高得点を連発した。当日初めてお題を知らされる参加者と異なり、出題者は十分な時間をかけて句作する特権が与えられるのだが、だからといって良い句が詠めるとは限らない。どちらの句も時事的な問題意識をこめた佳句である。  「ブレイキン」はパリ・オリンピックで初めて採用されたダンスの種目。もともとストリート・ダンスと呼ばれていたものが、競技種目になったものである。IOCが若者の機嫌をとるために採用したという向きもあるが、もともと新体操などが採用されたときも、あんなのは邪道だと体操ファンから声が出たのを思い出す。評判が良ければ残るし、悪ければ一回限りで終わるかもしれない。  この句の面白いのは「なにそれ」である。まさに、ブレイキンのことを初めて知った、高齢者の気持ちを代弁する一言である。作者は、その「なにそれ」の後に「五輪」をつなぎ合わせた。語順としては異例だろう。「なにそれ五輪」とは何だ、と思った読み手もいたに違いない。作者は「自句自解」で「今風の軽やかなリズム」にするために、この語順にしたと語っている。ラップ俳句とでも呼びたくなる、並々ならぬ技である。 (可 24.07.26.)

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