夏や子の自立か無口始まりぬ   高井 百子

夏や子の自立か無口始まりぬ   高井 百子 『合評会から』(日経俳句会) 青水 破調の調べながら、推敲を重ねた工夫が生きていて、完成度が高い。思春期の子を持つ親が必ず通過するエピソード。夏という季語を上五に据え、時間経過を巧みに詠み込んでいて上手い。俳句というより短歌に近いイメージですが、本日一番と思うくらい気に入りました。 水牛 夏は子どもが活発になるのが普通ですが、急に何かむっつりしちゃって、いよいよ反抗期が始まったのか、という親の思いが出ている句だなと感心しました。加藤楸邨に「麦を踏む親子嘆きを異にせり」という句がありますが、この年頃の子の気持が親にはなかなか分からないし、親の思いを子は分からない。この句は夏と取り合わせたところが良いし、面白いですね。 三代 夏と子の自立、無口がなんとなく合っています。夏やの切れ字が効いていて句の調子もいい。 守 我が家もこうでした。子育て時代を思い出します。           *       *       *  昔も今も思春期から大学を卒業して社会に踏み出そうとする頃の子供は難しい。子供は自分の心のうちのもやもやをうまく言葉にできない。親はそれをなかなか汲み取ってやれない。ことに近頃のように世の中の変わりようが激しく、親の方は懸命に理解しようと努力してもなかなか追いつけない。子の悩みを聞いてやり、道筋を示してやれないもどかしさがある。 (水 24.07.23.)

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