葉桜や上野は緑の風を呼び 澤井 二堂
葉桜や上野は緑の風を呼び 澤井 二堂
『合評会から』(日経俳句会)
てる夫 花が終わった後の上野公園はまさに緑の風が、見てますね。
浩志 隅田川を舞台にした句がほかに二つあって一緒ですが、葉桜は葉桜で良いですね。
反平 葉桜の下を通って美術館へ。
二堂(作者)上野は桜だけじゃあありませんよ。葉桜も良いですよ。
誰か さすが、地元上野の住人!
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コロナ禍の規制が解けて4年ぶり自由に花見ができた今年。日本の桜の見事さをSNSなどで知った訪日外国人を惹きつけ、地方の隠れた名所にまで押し寄せる事態となった。ことに手近な上野公園内は外国人の顔、顔、顔でうずまった。それも花が散ったあとは潮を引くように少なくなった。
当然といえばそうだが、ときには葉桜を愛でる日本人夫婦が散策する姿が見られる。花の命の儚さを葉桜に重ねる心情は我々日本人固有のものだろう。濃緑の装いをした桜樹の佇まいも捨てがたいし、そこを抜ける初夏の風はなにより心地よい。谷根千をテリトリーにする作者。上野の山が風を呼び、そこから吹きおろす風はまさに緑の匂いをかぐ思い。地元人ならではの爽やかな句だ。
(葉 24.06.08.)