香ぐはしき扇の微風隣りより 前島 幻水
香ぐはしき扇の微風隣りより 前島 幻水
『合評会から』(番町喜楽会)
可升 「隣りより扇子の風のおすそ分け」という句を作ったのですが、4月の連句の会に「隣りよりたけのこ飯のおすそ分け」という句が出たので引っ込めました。こちらの句の方がずっといいので、出さなくて良かったと思っています。
双歩 電車とかで、品の良さそうなおばさまの隣だと確かにありそうですね。(原句の「香ぐわしき」の表記に対して)「かぐはしき」もしくは「香しき」ならもっと良かった。
百子 そんなことってありますよね。お隣のご婦人が使う扇子の風に乗って白檀?の香りがすうーっと。繊細な景ですね。
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とても感じのいい句だ。ただ双歩さんご指摘の通り、こういう古風な言葉の場合は、「香ぐわしき」ではなく、旧仮名で「香ぐはしき」にした方がいいなあと思ったら、作者も「実は投句してから「は」にした方が良かったと後悔しました。「香ぐはしき」に改めます」と言って掲句の形になった。今や文語・旧仮名にこだわらなくてもいいのではないかという意見が多くなっている。確かに時事を詠んだり、カタカナ語の出る句では現代仮名遣いの方がすっきりする。一方、こうした優雅な句の場合は文語旧仮名が似合う。「や」「かな」「けり」など切字を用いた句も旧仮名の方がいい。しばらくは新旧併存で行くことになろう。ただし、一句の中で「新旧仮名遣いごちゃ混ぜ」だけはやめてほしい。
(水 24.05.18.)