雨戸繰る音も軽やか夏来る 嵐田 双歩
雨戸繰る音も軽やか夏来る 嵐田 双歩
『合評会から』(番町喜楽会)
春陽子 木の雨戸だと思うのですが、最近はこういう雨戸の家が少なくなりました。サッシやシャッターにはこの感じはないですよね。
青水 類句もありそうですが、きわめてオーソドックスで気品にあふれたいい俳句だと思っていただきました。雑詠句の中で一番の句です。
可升 僕はアルミサッシの雨戸をイメージしました。いつもはぎこちないのに、今日はさっと開いて、開けば夏の爽やかな朝だった。こういう日常のひとこまの中の発見を詠むのは好感が持てます。
幻水 マンション生活が長いので、そもそも雨戸がぴんと来ません。若い人もそうでしょう。
誰か そうか、一戸建住人専用の句か(笑)。
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「雨戸繰る」という言葉が“懐かしい”と言われる時代になってしまった。それは別に良くも悪くもないことで、住宅建築様式の変遷に過ぎない。ただ、「雨戸開け当番」を兄弟で決めて、番に当たった日は早起きしてガラガラと雨戸を開けて朝一番の空気を吸って胸をそらす。それが実にいい気持だった。その心地良さを味わえない今時の子供は可哀想だな、などということをこの句を見て思った。しかしそれも八十路の繰り言。「何言ってんの、ぜんぜんワカンナーイ」と、スイッチ一押しで電動シャッターを上げる孫娘に笑われてしまう。
(水 24.05.13.)