絶壁を穿ちて紅き山躑躅     岩田 三代

絶壁を穿ちて紅き山躑躅     岩田 三代 『合評会から』(日経俳句会) 朗 目前の躑躅を詠んだ句が多い中で、遠景の句を選んだ。孤高の躑躅の凛とした感じが好きです。 青水 山に咲いているつつじの鮮やかな感じ、絶壁という言葉を配したところがいいと思います。 芳之 組み合わせの妙です。茶色の絶壁に鮮やかな躑躅が映えます。 健史 赤い躑躅の鮮烈な姿が浮かびます。 卓也 穿ちてという言葉が効いている。 水馬 穿つは好き嫌いが分かれる表現かも。私は良しとします。 三薬 山躑躅は真っ赤というよりは紫色の方が強く、やや淡く私には感じられるので、この句にはちょっと添いかねます。             *       *       *  深山の断崖のくぼみに躑躅が自生し、紅い花を付けている。それを「穿つ」と表現したところが句の眼目である。そそり立つ黒褐色の岩場に咲く躑躅は、下から見ればまるで断崖に穴を空けて、群生した花が突き出ているように見えるのではなかろうか。擬人化表現だが、思いがけない場所で躑躅を見つけた驚きが伝わり、違和感を覚えない。  三薬氏の指摘では山躑躅は紅紫色のイメージが強いようだが、朱赤色の種類も多い。山躑躅で画像検索をすると紅一色に染まる山も現れる。何よりも真っ赤な躑躅であったがゆえに、作者は絶壁を穿つほどの生命力を感じたのであろう。 (迷 24.05.10.)

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