ひび割れし棚田潤す穀雨あり   中村 迷哲

ひび割れし棚田潤す穀雨あり   中村 迷哲 『この一句』  この句を読んで真っ先に目に浮かんだのは、能登の白米千枚田だった。丘の上から日本海へ一気になだれ落ちる形の棚田である。初夏には水を湛えた田に稲が植えられ、青空を映している所もあった。仲秋には黄金色の稲穂が頭を垂れていた。冬には行きそびれたが、棚田にはイルミネーションがなされ、幻想的な光景だったという。  その、ある意味で日本の原風景ともいえる棚田が、地震で破壊されてしまった。句会では「穀雨という季語がぴったりはまって素晴らしい」という声に対し、作者は「白米の千枚田は、地震でめちゃくちゃ大きくひび割れ、復旧もなかなか手がつかなかったのが、やっと復旧が始まったとテレビで…」と、句作の背景を説明していた。  インドネシアではウブド―の、タイではチェンマイの棚田を見て来た。しかし、それらの美しさはいつまで保たれるのだろうか。世界各地で災害が頻発しているからだ。先日も台湾の花蓮で地震があった。豪雨や旱魃も後を絶たない。一方、地球温暖化に歯止めがかかる気配はない。大地震も火山の爆発も地球が本気で怒っていることの証ではないのか。 (光 24.05.03.)

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