海砂を掻いて浅蜊の夢破る    中沢 豆乳

海砂を掻いて浅蜊の夢破る    中沢 豆乳 『合評会から』(日経俳句会) 三代 浅蜊の夢を破るっていうのが良いなあと思って頂きました。のんびり寝てたのに引っ掻かれた。潮干狩の風景を素敵な言葉で表現している。 鷹洋 ユーモラスです。浅蜊が寝てたっていう想定なんでしょう。浅蜊の夢を破ったという大変面白い詠み方なので、頂きました。 水兎 蜃気楼は蛤の夢、みたいな句ですね。浅蜊だと水鳥の羽ばたきで消えてしまうくらいの小さな蜃気楼でしょうか。 水馬 擬人法はあまり採らないのですが、メルヘンチックでユーモラスなので。 芳之 浅蜊にとっては災難という視点が面白い。 健史 もののあわれを感じます。 阿猿 のんびりと春の砂浜で居眠りをしている浅利を熊手でガリガリとほじくり出す。長閑なような、残酷なような。 三薬 海砂なんですが、これは土木用語です。だから「海の砂」とするか、「遠浅を掻いて」などがよかったな。           *       *       *  東京湾のハマグリやアサリは今や絶滅と言っていいくらいで、とても潮干狩のできる状況ではない。しょうがないから中国や韓国から輸入したものを砂浜にばらまいて、潮干狩のお客さんを呼ぶ。遥々と空を飛んできたアサリはようやく日本の砂浜にもぐり込み、まどろんだと思ったらいきなりガリガリやられ、「かんべんしてよ」とぶつぶつ言っている。 (水 24.04.19.)

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