すこやかに舟漕ぐ妻や春の宵 須藤 光迷
すこやかに舟漕ぐ妻や春の宵 須藤 光迷
『合評会から』(酔吟会)
春陽子 幸せな家庭だなあと思いました。「春の宵」が効いています。
愉里 平和で穏やかな風景で「春の宵」がぴったりです。わたしは「すこやかに」という言葉に惹かれて採りました。
双歩 妻への愛情がしみじみと伝わってくる句ですね。
道子 「すこやかに舟漕ぐ妻」って平和でいいですね。
光迷(作者) ご飯を食べて、テレビを見始めると、十分もしないうちに舟を漕ぎ始めます。
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何とも穏やかなひと時である。春の夕刻、うつらうつら微睡む妻を温かく見守っている愛妻家が浮かび上がる。宋の詩人、蘇軾(そしょく)の『春夜』になぞらえれば、「春宵一刻船漕愛妻」とでもなるのだろうか。春の宵の駘蕩とした雰囲気が実に良く表現されている。
句会では、「『すこやかに』は子供にはよく遣うが、妻には相応しくないのでは」との意見があった。確かに、子供に対して「健やかに育って欲しい」などと遣うことが多い言葉ではある。とはいえ、屈託も無く船漕ぐ妻に、これからも心身共に健全でいて欲しい、と願う作者の気持ちも理解できるし、微笑ましい。
(双 24.03.30.)