うとうとと遅日のバスの揺れ心地 星川 水兎
うとうとと遅日のバスの揺れ心地 星川 水兎
『合評会から』(番町喜楽会)
可升 「遅日」は詠むのが難しくて、この句がいちばん季語の雰囲気を反映していると思いました。ただ「うとうとと」はちょっと説明的な気がしました。
水牛 確かに「うとうとと」と「揺れ心地」は重なった感じがしますね。
光迷 病院帰りによく恵比寿からバスに乗ります。女子高生が話しているのを聞いたりしていると、ついうとうとしてきます。春らしいいい気分の句です。
的中 遅日は電車ではなくバスですね。なかなか暮れない夕方とバスの揺れ心地が、よい取り合わせです。
水兎(作者) 「うとうとと」と「揺れ心地」のダブリ感はどうしたらいいですかね?
春陽子 「うとうとと遅日のバスの最後尾」なんてどうだろう。
誰か 「最後尾」では、うとうとじゃなくて横になりたくなっちゃいますよ。
水牛 うーん、やっぱり「揺れ心地」は外せないから、このままで良い気がします。
* * *
遅日は傍題に「暮れ遅し」や「暮れかぬ」があるように、昼が長くなったことより日の暮れるのが遅くなったことに重きを置いた季語。ちょっと眠気を催したりする。それとバスの揺れ心地との取り合わせは、絶妙というほかない。経験がもとになった句だろうが、いいところに目を着けたものだ。
(光 24.03.25.)