弁当に早緑の葉や春めけり 徳永 木葉
弁当に早緑の葉や春めけり 徳永 木葉
『季のことば』
「春めく」は「いかにも春だなあ」という感じを抱かせる仲春3月の季語なのだが、温暖化の昨今は2月からこうした暖かい日がある。春野菜もずいぶん早く育つ。ことに近頃はすべてがハウス栽培という「温室育成」だから、1月2月から春野菜が出回る。
句会でこの句を採った人が「菜の花のことかなと思って頂きました。ちょうど昨日飲みに行き、菜の花がおいしいねって、お店で会話をしたばかりだったので……」と言っていたが、私もこれは菜花だろうなと思った。いかにも春らしい綺麗な句だ。
私たちの句会は夜間開催が多いので時間節約のため、事前投句を幹事が取りまとめ「選句表」を参加者にメール配信する。それを見てあらかじめ選句して句会に臨み、句会はいきなり披講(選句発表)から始める方式を取っている。だからこの句も句会の4、5日前に見ていた。翌日、葉山に遊びに行くことになっていたので、「菜の花の辛子和えはいいなあ、これで弁当を作ろう」と思い立った。早速近所のスーパーで房総産の菜の花を買い、たらこむすびと菜花の辛子和えの弁当を作って、海岸で食べた。晴れた空には鳶が舞い、海の彼方には江ノ島がぼうと霞んで見える。早緑の菜花がたらこのピンクに映え、いかにも春めく感じであった。
(水 24.03.13.)