女流書展誘いの葉書春めきて 工藤 静舟
女流書展誘いの葉書春めきて 工藤 静舟
『この一句』
女流書展という言葉の持つ華やかなイメージが、春の訪れを喜ぶ気分と響き合って、気持の明るくなる句である。上の句は字余りだが「じょ・りゅう・しょ・てん」という拗音と撥音の連続が勢いを生み、書展への弾む思いを感じさせる。女流書展を一度のぞいたことがあるが、参会者は大半が女性で、和服姿の人もいて、墨色の世界に色とりどりの花が咲いたような印象だった。
句会では「女流書展は春も秋も開催されるのでしょうが、言葉の響きから春めいた感じがする」(雀九)とか「桜色の葉書にお誘いの文字が書いてあるのでしょう」(愉里)など、まさに春めく気分を感じ取った人が多かった。
日本の書道人口は、レジャー白書によれば220万人程度と推計され、この10年で半分以下に減っている。パソコン・スマホの普及により、筆で文字を書く文化は日本人の日常から消えつつあるようだ。文化庁の調査では、書道団体に属して日頃書に親しんでいる人は67万人弱で、そのうち75%は女性である。女流書展が隆盛を極めるのも当然と言える。
作者は古くから書に取り組み、日経書道会の幹事を務める能書家である。書道仲間の女性も多く、春の陽気とともに舞い込んでくる案内の葉書を眺めているのであろう。宛名は流麗な筆致の手書きに違いない。
(迷 24.03.12.)