梅咲いて祖母の産着の宮参り   高井 百子

梅咲いて祖母の産着の宮参り   高井 百子 『この一句』  梅が咲いて春を迎えた嬉しさと、赤ちゃんをお宮参りに連れて行く喜びとを重ね合わせて詠んだ、心温まる句である。心情がそのまま伝わってくる素直な句で、番町喜楽会2月例会の梅の兼題句で最高点を得た。境内の梅が咲き揃った神社で、幼子を抱いた祖母と両親がお宮参りに訪れた光景が目に浮かぶ。  お宮参りは、産土神に子供が無事に誕生したことを報告し、健やかな成長を祈る行事。生後1カ月をめどに行う家庭が多いが、赤ちゃんも母体も安定する生後100日前後に百日祝い(お食い初め)と一緒にお宮参りをするケースもある。天気が良いのが一番なので、この家族も暖かくなって梅の花が咲くのを待っていたのではないかと、想像が膨らむ。  句会で議論となったのは、「祖母の産着」の意味合いである。祖母が着た産着と考えると、70年前後は経っているだろうから、おさがりを使うにしても古すぎるように思われる。そこで「これは祖母が作ってくれたという意味でしょう」との見方が示され、一同納得した次第。  産着は母方の実家が用意するケースが多いと聞く。自ら選んだか仕立てた産着を着せて、可愛い孫を抱く。おばあちゃんの喜びに、匂い立つ梅が寿ぎを添える。 (迷 24.02.25.)

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