野の鳥に何かを言へば息白し 中嶋 阿猿
野の鳥に何かを言へば息白し 中嶋 阿猿
『合評会から』(日経俳句会)
卓也 柔らかい眼差しが伝わる。
双歩 ユニークな俳句です。鳥を見て、独り言を言ったんでしょう。あるいは誰かに鳥の名を問いかけたのか。詠み方と言い、何か目に付いた句でした。
雀九 最近は、あんまり白い息を見たことはありませんが、これは息が白くなりそう。名前を知らない野鳥に向かって独り言を言ったんでしょう。そうしたら自分の息が白かった、と。とても俳句らしい句と思います。
水牛 雀九さんのおっしゃる通りなんだけど、見たままそのまま詠んでいてとても良い感じです。息白しの句の中で一番いい句だなと思いました。窓を開けたら庭先の小鳥がパーと逃げて、ちょっと離れた庭木に飛び移っていた。それに一言、語りかけた。「寒いわね」でも、「元気だね」でもいい、そんな感じがスッと伝わってくる。素晴らしい句で、感心しました。
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「息白し」の兼題にいくつも並んだ句の中で、チェックする筆が思わず止まった。まるで映画のワンシーンのような、妙に印象に残る句だ。その類想から2009年制作の韓国、フランス合作映画『冬の小鳥』を思い出した。孤児院に入れられた韓国の少女がフランスの養父母に貰われるまでの日常を描いた、監督の自伝的内容の作品で、傷ついた小鳥を小道具として繊細な心の動きを表現していた。
掲句は水牛さんの評がすべてを言い表しているが、迷哲さんが呟いた一言「新感覚派だね」も言い得て妙…