走り来て子ら告げ口の息白し   今泉 而云

走り来て子ら告げ口の息白し   今泉 而云 『この一句』  一読して小学校の運動場が浮かんできた。寒い日に遊んでいた生徒が数人、先生の元に駆け寄ってくる。「男子が悪いことしています」とか「〇〇君と〇〇君がけんかしています」とか、口々に伝える。字義通りの告げ口ではなく、先生に知らせる、言いつけるぐらいの感じではなかろうか。頬を赤くした幼い子供たちが、息を弾ませながら懸命に訴える様子がイメージされる。  句会では「子供らが走ってきて一生懸命に知らせている光景」(愉里)、「小学校の運動場か。我先に話しかけている子供たちが浮かぶ」(阿猿)と、同じような場面を想起した人が多く、「息白し」の兼題句で最高点を得た。  句を分解すると、上五の「走り来て」という複合動詞が大きな働きをしている。走って来るほどだから、広い運動場や広場と分かり、子供らが駆け寄る景がすぐに浮かぶ。さらに走れば息が弾み、その白さが際立つことになる。  告げ口という否定的な言葉を使いながら、句の印象は明るい。白い息を弾ませ懸命に訴える子供の姿から、無邪気な告げ口であることが分かるからであろう。近年は温暖化が進み、白い息を吐く子供たちを見かけることが少なくなった。しかし時代が変わっても子供の生態はあまり変わらない。走り来て母親や教師に訴える場面が今も見られることが、多くの共感を得た理由ではなかろうか。 (迷 24.02.08.)

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