この爺に良縁ありと初御籤 玉田 春陽子
この爺に良縁ありと初御籤 玉田 春陽子
『合評会から』(日経俳句会)
青水 自虐とも諧謔ともいえる句。「初御籤」でまとめたところがいいですね。
水馬 やる気にあふれていてよろしいのではないでしょうか。すごく愉快な句です。
鷹洋 ほとんどギャグに近いような句ですね。二百円くらいで籤を引いたらこんなのが出てきたのでしょう。作者の気持になって、笑って採りました。
てる夫 爺さんに良縁とはどういうことでしょうか。想像がつきません。やもめの爺さんを娘が慰めているのでしょうか。
水牛 御御籤は万人向けに何でも書いてあります。よくある光景だが面白い。
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おみくじは引く人を選ばない。社寺の〝営業妨害〟をするわけじゃないが、万人に合うようなご託宣が書かれているばかりで、ほとんど当たり障りがない。それはおいて、作者はかなり良いくじを引き当てたとみえる。今年は「良縁あり」と。苦笑いしている八十路の作者の顔が目に見えるようだ。俳句達人としてすかさず一句をものにする。これぞ俳味たっぷりの掲句である。新年初句会を笑いで盛り上げた手腕は確かだ。
ちなみに筆者は社寺には参拝するが、おみくじを引かないことにしている。大吉が出てもアンラッキーがあれば運気消滅。数少ないだろうが大凶を引けば引かなければよかったと後悔。引かなければ世は何事もなし。
(葉 24.01.28.)