変らぬは分断社会去年今年 徳永 木葉
変らぬは分断社会去年今年 徳永 木葉
『合評会から』(酔吟会)
青水 「核の冬破滅の縁にある地球」という同じ作者の句もありましたが、俳句に「分断社会」という言葉を持ち込み、しかも「去年今年」にぶつけて成功していると思い、こちらを特選にしました。
愉里 「去年今年」といえば、虚子の「貫く棒の如きもの」を思い出します。それに対し、あえて「分断」という言葉を当てたのが、うまいなと思いました。
光迷 いまの世の中は分断社会そのものですね。身近なところでは銀行の振込手数料で、窓口だと九百円以上とられるのに、ネットでやれば二百円ちょっと。いわばITリテラシーによる分断です。他にも大小いろいろありますね。
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分断社会については米国の大統領選挙などでもよく議論される。日本でも様々な局面で分断が表面化している。移動や買い物を巡っての難民もその範疇に入るだろう。少子化に関連した子供を産める家庭、産めない家庭という問題も。これは生殖能力ではなく「出産費用・教育費用を考えると子供は…」と躊躇し、見送る夫婦の多いことだ。強者・弱者で済む話ではない。政治の貧困ここに極まれり、ではないか。
(光 24.01.23.)