寛解や姪のおごりの薬喰 金田 青水
寛解や姪のおごりの薬喰 金田 青水
『この一句』
一読して「姪のおごり」の中七に清新さとリアリティーを感じて、点を入れた。俳句に登場する家族は、夫妻に父母、子や孫がほとんどで、甥姪はめったに見ない。その意外感が清新さにつながったのだろうが、妻子より血縁の遠い姪までが、寛解を祝ってくれたことに、作者の喜びの大きさが伝わってくる。
寛解とは病気の症状が一時的に軽くなったり、消えたりした状態を表す。完治とは違い、再発のリスクはあるが、患者や家族にとっては、何より嬉しい知らせである。その寛解祝いに、体力を回復するよう姪が肉料理をごちそうしてくれた。おごってくれるのだから、社会人の姪であろう。となると薬喰も牡丹鍋といった和食系ではなく、おしゃれなレストランでのジビエ料理が想像される。可愛がっている姪にご馳走してもらい、相好を崩している叔父さんの笑顔が浮かび、心が温まる。
句会では「姪に唐突感がある」という指摘があった。妻や娘ならよく分かるが、なぜ姪なのか、しっくりこないという訳だ。作者の弁によれば、実は作った句で、「嫁も妻も考えたが、姪が俳句としておさまりが良かった……」とのこと。一同大笑いとなったが、姪との距離感によって、あり得ると思った人と、嘘っぽいと感じた人に分かれたようだ。
(迷 24.01.08.)