転寝や夕刊の来ぬ三が日     須藤 光迷

転寝や夕刊の来ぬ三が日     須藤 光迷 『この一句』  さし当たってすることのない正月。せめて新聞でもあれば読みふけることが出来るが、1月2日の朝刊はなく、夕刊たるや暮れの29日から1月3日まで休刊。一般読者であっても手持ち無沙汰を感じるところであるが、この句の作者は現役をリタイアした元新聞人。新聞の来ない日は、ことさら寂しく、退屈が昂じて、つい「転寝(うたたね)」をしてしまうのだろう。  私事ながら、紙媒体の新聞を読まなくなってから久しい。会社人間だった頃、一年のうち三分の一くらい出張する羽目になり、宅配の新聞をほとんど読めなくなってしまった。おりよく各紙が電子版を始めたので、これ幸いと乗り換えてしまった。何よりも、海外でも日本の新聞が読めるのが有り難かった。当初はノートパソコンで読んでいて不便なこともあったが、その後はタブレットで読むようになり、今も電子版を購読している。  そんなわけで、実感として、この句の気分を共有することは出来ないが、ある懐かしさとともに共感することは出来る。ご自身の役目か、奥さんの役目か、朝夕ポストに新聞を取りに行くのは、生活にメリハリを与える習慣で、なかなか良いものである。ましてや元新聞人である作者には、刷り上がったばかりのインクの匂いに、特別なものを感じるのではないだろうか。 (可 24.01.04.)

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