観戦の合間につくる雑煮かな 中嶋 阿猿
観戦の合間につくる雑煮かな 中嶋 阿猿
『この一句』
正月ことに三が日の朝は真に忙しい。まずお節料理を机の上に並べ、お屠蘇の用意をし、お雑煮の準備にかかる。そのころには既に駅伝のテレビ中継が始まっている。元日には上州路で実業団の、二日と三日には箱根路で大学生の駅伝が繰り広げられる。そこで、餅の焼け具合や雑煮の煮え具合を気に懸けつつ目や耳はテレビに、ということになる。
この句に描かれたそわそわした気持ち、駅伝好きの夫婦としては実によく分かる。「観戦の合間につくる」という表現は実に適切だ。もとより正月のスポーツは駅伝だけではない。アメリカンフットボールもあれば、ラグビーやサッカーもある。だがしかし、襷渡しの合間、走っている間に台所へ立ってという姿を想像してしまう。
ところで、作者の雑煮はどのようなものなのだろうか。餅は丸いのか四角いのか、また焼くのか焼かずに煮るのか、醤油味か味噌味か……。さらに汁に入れる野菜には人参に大根、牛蒡、小松菜などなどあるがさて、とも。駅伝は日本発祥の競技で、箱根駅伝は令和6年の今回が第100回。優勝の行方とともに雑煮の出来具合が気に懸かる。
(光 24.01.03.)