叡山を下りて俗世のおでん酒  溝口 戸無広

叡山を下りて俗世のおでん酒  溝口 戸無広 『合評会から』(日経俳句会) てる夫 俗世という措辞で無条件に頂きました。 而云 単に叡山へ登っただけ。そして山から下りて来て、少し気取って俗世と言ったんだ。 双歩 山登りして、軽いノリで俗世と言った。 迷哲 お参りして少し心が浄められたが、下界に来るとおでんと酒が待っていた。 雀九 京都から東京まで戻って来たのかも。 健史 おでんを召し上がったのは出町柳界隈でしょうか。それとも一乗寺?想像が膨らむ句です。 方円 確かにおでん酒は、俗世そのものです。           *       *       *  皆さん語っているように、「俗世」と気取ったところが面白い。日頃、濁りきった世界にどっぷり浸かっている身だが、比叡山に登って、澄んだ山気を吸い込み深呼吸しているうちに、なんとなく清められた気分になってきた。  そして下山。飛び込んだ先がおでん屋というのが愉快だ。大根だ竹輪だがんもどきだと追いかけているうちに、たちまちメッキがはがれ、元の木阿弥である。一時間もたてば、「こちとら色即是色といこうじゃねえか」なんぞと訳のわからぬことを吠えている。 (水 23.12.18.)

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