薬喰ちらとかすめる診断日 向井 愉里
薬喰ちらとかすめる診断日 向井 愉里
『合評会から』(番町喜楽会)
白山 診断日に何を言われるか心配しているのでしょう。年をとっても食べたいものは食べたいですよね。
光迷 持病が悪化しそうな感じがあって、昨日はMRI、今日は脳のCTスキャン。そういうことではなく、やはり冬場だから元気をつけないという読み方もありますね。
斗詩子 まだ診断が出たわけじゃなし、気にはなるけど今はパクパク食べてもよいではないかと開きなおったかな。
迷哲 「診断日」という言葉が少しなじまないですね。「診察日」とか、健康診断なら「健診日」などの方がいいかもしれません。
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新聞社に勤める作者には年一回、会社の健康診断がある。胸部レントゲン、心臓検診、採尿など基本的な検査を行う。さすがに身長・体重測定こそないだろうが、忙しい業務を縫って必ず受診するよう上司が促す。後日「要再検査」の結果が出たりしたら、煩わしいよりも心配事がひとつ増えることになる。この句はその間の心理状態を詠んだとみた。健診日二、三日前から禁酒したり高カロリー食を控えたりして準備する者も。酒徒を自認する作者には数値異常などを気にする気配が薄い。「やはり気になる」ではなく「ちらとかすめる」程度だ。こってりしたすき焼きもノープロブレム!
(葉 23.12.16.)