しくじりし日々の記憶やおでん喰ふ 廣上正市
しくじりし日々の記憶やおでん喰ふ 廣上正市
『合評会から』(日経俳句会)
実千代 若い日への追憶か。おでんを食べてほっとした気持ちが伝わります。
迷哲 おでんは昔を思い出すよすがとなる。苦い記憶がおでんらしい。
水牛 おでんはいろんな物が入っていて、連想を呼ぶからか、あれこれ思い出す。しみじみ振り返っている感じが、おでん酒にぴったり。
青水 苦い記憶とおでんを取り合わせて成功している。
百子 おでんは母の味であり、記憶を呼び起こすのですね。
ヲブラダ もちろんこれは一人酒でしょう。鮨でも洋食でもしくじりの振り返りはできません。
卓也 置き忘れていた古傷を呼び覚ます感覚。
早苗 おいしいもので忘れられるとは、ありがたいと改めて思いました。
木葉 誰にも数えきれないほどある失敗の経験。おでんを食べながら一つひとつが脳裏を駆け巡る。
枕流 おでん鍋を前にすると、ああすれば良かった、こうすれば良かったと思い出がよみがえるのは何故でしょう。
* * *
句会で最高点の句だが、反対意見もだいぶあった。「涙、しんみり気分が気に入らない」「喰ふが気に入らない。おでん酒でいい」「日々というのが嫌」
「おでんにしくじりとか寂しい思いなんて、全くそぐわない」等々、いずれも納得できる。それにしても「おでん」人気は根強いなあと思う。
(水 23.12.10.)