加湿器と痒み軟膏冬来る 工藤 静舟
加湿器と痒み軟膏冬来る 工藤 静舟
『合評会から』(日経俳句会)
青水 ボクの発想には全くない接近の仕方です。そのまま歳時記に乗せても、とまで思いました。
而云 う─ん!そうかなあ。加湿器も痒み軟膏もそのまま冬なんだよ。
双歩 乾燥肌で痒くなるのはよく分かる。
実千代 実は選句のやり方について、いま反省しています。よく分からなくなっています。自分がどう感じるか直感で選んでいるので、俳句の良し悪しを言葉では上手く言えないんです。
水牛 悩むことはありません。自分が感じたように選んでいいんです。それが選句の大前提です。その上で、表現方法、言葉遣いなどを検討する。
三代 すっかり忘れていましたが、冬の必需品ですね。身につまされます。
水馬 加湿器は湯気立つという季語がありますが、季重なりは気になりませんでした。
定利 立冬をこの二つで詠むとは。面白いですね。
* * *
「立冬」という兼題で詠まれた句。こう詠まれてみればなるほどと思い、実千代さんの言うように「いい」としか言いようがない。実はそういう句が本当に良い句なのだと言えるのではないか。「冬来たる」の季語に加湿器と痒み止めとを取り合わせて、直ちに立冬を感じさせる。子どもが作ったような句ではあるが、句作の骨法をすらりと明らかにしている。
(水 23.12.04.)