ひととせの束の間なるやちちろ鳴く 和泉田守

ひととせの束の間なるやちちろ鳴く 和泉田守 『合評会から』(日経俳句会) てる夫 ちゃんと十七音まとまっています(笑)。ひととせというのは束の間なのかどうか、何やら意味ありげな詠み方だと思いました。 青水 以前はこういう言い回しが嫌いでしたが、最近は腑に落ちるようになってきた。地球の生命だとか、動植物の世代交代とか、人生五十年とか百年とか、いろいろなことを言いますが、ちちろ鳴くという季語と合体すると、何となく人生を達観したみたいな気になります。 而云 俳句は「や」で切れるとよく言われます。「や」で切れる、ひととせの束の間というのは人間が考えること。ちちろなんてもっと短く、すぐ死んじゃうからと、そういうふうに解釈して頂きました 操 一年は束の間に過ぎ去りゆく。今年も早やこおろぎの鳴く季節に。 てる夫 いずれにしても、この句は論理ではないのでしょう。           *       *       *  「ひととせの束の間」は、ちょっと気取った表現とは思うが、ちちろ鳴くという言葉とよく合っている。一年はあっと云う間だという俳句はそれこそ嫌になるほど目にしているが、多くは年の暮になっての感慨を詠んだものだ。蟋蟀を聞いてそれを感じるというのは気が早い。しかしよく考えると、むしろその方が自然かもしれない。あの声に耳を澄ませていると、引き込まれ、「何もしないうちに冬になってしまうなあ」とつぶやく。 (水 23.11.11.)

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