五分づきに混じる黄みどり今年米 星川 水兎
五分づきに混じる黄みどり今年米 星川 水兎
『季のことば』
新米が美味い。今年も知る辺からコシヒカリ30キロ袋が届いた。大学の研究農場で収穫されたホヤホヤの今年米である。さっそく近くのコイン精米所に行って精白した。塩にぎりにして頂いたが、やはり新米の味は格別である。掲句のような「五分づき」ではなく普通搗きだったから、真っ白な米の中に黄緑の粒は見当たらない。黄緑の米粒は「青米」といって、完熟前の葉緑素が残った米粒だそうだ。これが適度に含まれるのが望ましい時機に収穫された証拠という。玄米や三分、五分搗きではこの青米が残ることがある。黴の付いた米ではないかと心配して、農協などに問い合わせる向きがあるそうだが、まったく問題はない。
作者は新米を覗き込んでこの青米を見つけたのだろう。白一色の中の黄緑の一粒。「これはなに?」と思ったか、上記のことを知っていたのか、それはさておき優れて色彩感に富んだ句だと思う。また、忙しい日常生活のなか青米を見つけ、目の前をあっさりと描写して詠んだ。世間の米好きに負けず劣らず新米が大好物の筆者には見逃せない一句であった。新米の新鮮さと美味さが、「黄みどりの粒」で十分に伝わる。相変わらず米の消費が落ち込んでいるが、「新米」「今年米」のことばは、この時季日本人の心にさざ波を立てる。
(葉 23.11.09.)