南へと旅立つ蝶や秋高し 中村 迷哲
南へと旅立つ蝶や秋高し 中村 迷哲
『季のことば』
旅する蝶と言えばアサギマダラ(浅黄斑)の事だろう。体長七十ミリほど、
国蝶のオオムラサキ(大紫)に近い大型蝶。濃茶色と青白色の斑模様が鮮やか。
遠隔地の愛好家は、アサギマダラを捕獲すると、その日時、場所などをマーキングして放す。それが次の愛好家の手に渡って「長旅の記録」が手に入る仕組みだ。
本州から沖縄への中継地、九州大分県と四国愛媛県の豊後水道の小島にアサギマダラの休息地がある。そこから沖縄まで、先は長い。本来長旅はしない蝶類だが、千キロ、二千キロの長距離飛行のメカニズムは明らかでない。
筆者の住まいのある長野県上田市は南に飛ぶアサギマダラの根拠地のようである。自宅南の独鈷山、西にある夫神岳、女神岳の周辺では、目撃情報がある。独鈷山麓の農家の自宅からアサギマダラが好む藤袴の株を分けて頂いた。その二、三株が庭の隅で咲き誇っている。三年ほど経ったこの夏から秋にかけてもわが庭に大型蝶の気配はない。残念ながら今年はだめなようだ。
果報は寝て待て、ではないが、信州のどこかに来ているアサギマダラが舞い込んで来るのを来秋までのんびり待つことにしよう。
(て 23.10.21.)