夜食粥病の兄の残る日々 岡田 鷹洋
夜食粥病の兄の残る日々 岡田 鷹洋
『この一句』
昭和十二年生まれの作者は八十路の半ば過ぎ、病床のご令兄は卒寿の世代だ
ろうか。ご兄弟にお別れの時がいつ来るか、ご心配の日々とお察しする。しかし
十七音に感情的な措辞はない。冷厳な病室の雰囲気を演出する文字列があるだ
けだ。一読、強いインパクトを受ける一句である。
作者は新聞社の北京特派員として毛沢東死去、鄧小平復活から日中平和友好
条約発効などとつながる激動の七十年代後半をカバーした。帰国後、国内勤務と
なってからも、さらに退社後にも東京都内の夜間中学校で、ボランティアで中国
人向け日本語学教室を受け持った「中国屋」さんである。
さて老後を療養施設で過ごす高齢者が増えた。九十五歳で亡くなった筆者の母
も晩年、介護付病院の世話になった。高齢者を自宅で看取ることができないのは、
仕方がないかなと思う。しかしそれでいいのか、葛藤が続く。
(て 23.09.29.)